研究分野・キーワード:高分子構造・物性、高分子表面科学、環境調和材料、生体親和性材料、マテリアルリサイクル
人類は、その概念が確立されるよりも遥か昔から、高分子を食料として摂取し、また、加工して衣服などに活用してきました。生体高分子・天然高分子として知られているタンパク質や多糖がその代表です。一方、20世紀に入ると石油化学の発展とあいまって、繊維や樹脂、ゴムなどの合成高分子が工業的に作られるようになりました。高分子の概念が確立されてまだ100年ちょっとですが、高分子は、我々の日常生活を豊かにしてくれるなくてはならない材料になっています。
急速に需要が拡大してきた高分子ですが、21世紀に入り、環境や人々と接する場面において、深刻な問題も顕在化しています。Quality of life (QOL)を維持・向上させつつ繁栄するためには、使用中や使用後の高分子材料を好適な循環サイクルにのせることが鍵になると考えられます。
当研究室では、高分子の構造・物性ならびに表面科学(science)を駆使して、高性能・高機能な固体材料や表面材料の創出(technology)に繋がる実験研究を行っています。研究室メンバー全員が、高分子特有の階層的凝集構造と熱運動性を念頭に分子描像を描くことができ、高分子材料の挙動を説明できるようになることが目標の一つです。高分子を環境・人々に高度に資する材料に発展させるべく、日々、研究に取り組んでいます。
主な研究テーマは以下のとおりです。
ポリエステルやポリアミド類をベースとする固体高分子材料が、水環境下でオリゴマー/モノマー化する機構を分子レベルで解明することを目指しています。強靭性・耐久性を有しつつ相反する分解性も備え、究極的には、環境中でオンデマンド分解するしかけを構築します。
タンパク質、多糖などの生体高分子を主成分とするグリーン構造材料の設計指針の確立を目指しています。分子構造の多様性、単分散性、環境調和性、生体適合性など、生体高分子ならではの特徴を生かしてユニークな力学特性を示す構造材料を構築します。
バルクと比較して、エネルギー状態が著しく異なる異種相界面に焦点を当て、そこで起こる様々な分子イベントを物理化学的に解析しています。それらの情報をもとに、生体応答をアクティブに制御できる機能性界面材料の構築や、劣化過程の制御による高度なマテリアルリサイクルの実現を目指します。